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NPO401k教育協会オープニングセミナー 確定拠出年金法案成立1周年記念

「確定拠出年金の未来に向けて」
〜情報提供と投資教育の課題を探る〜
NPO確定拠出年金教育協会は、7月12日、全国町村会館において確定拠出年金法案成立1周年記念セミナー「確定拠出年金の未来に向けて」(後援:日本経済団体連合会)を開催しました。法案成立1年と当協会の発足を記念したこのセミナーは、多くの方々にご参集いただき、盛会のうちに幕を閉じました。トークセッション「確定拠出年金の未来に向けて」では、行政の立場から厚生労働省の山崎さん、導入企業の代表としてサンデンの秦さんを招き、司会進行を労働法に詳しい森戸教授にお願いして、401k制度の現状総括と、情報提供と投資教育について特に法的な面からアプローチし、かなり掘り下げた興味深い議論が展開されました。以下にそのダイジェスト版をお届します。
トークセッション
「確定拠出年金の未来に向けて」 〜情報提供と投資教育の課題を探る〜

パネリスト
山崎史郎氏
秦 穣治 氏
厚生労働省 年金局企業年金国民年金基金課
サンデン株式会社 人事部 部長
司会
森戸英幸氏 成城大学法学部 教授
パート1 法案成立1年を振り返って
司会 確定拠出年金(以下401k)法案成立1年ということで、この1年の総括を――
山崎 6月28日現在、導入企業・グループ121社、加入者10万人、うち75社(6割)が300人未満の中小企業。401kの狙いの1つである、確定給付を持てなかった中小企業が年金制度導入できるという目的は達成できたと言えるかもしれない。
・導入企業は今後もある程度のペースで着実に増えていくのではないか。
・制度は大枠を決めているだけなので、10万人の加入者を得たいま、新たな課題が提起されている。これから本当に使いやすい401kの制度作りがスタートするのではないか。
 サンデンは厚生年金基金を解散して401kに移行したトップバッターだが、過去分の移行が済んでおらず、仕組みが完成したとは言えない。これまで同様の移行パターンを行う企業はなかったが、今後は仲間が増えそうなので心強い。
・もっと気軽にDBの原資をDCに持ち込むことができる仕組みを整えるべきではないか。
・3月25日に第1回の拠出を終えた。商品選択においては51%が投資信託を選択。30代、40代がリスクをとり、20代、50代は元本確保に寄る傾向がある。3000人の社員中2500人が会社が用意した401kウェブサイトにアクセスしていた。順調にスタートしたという実感がある。
・非常に早いスピードで401kマーケットが崩れている。投資教育費用や信託報酬などが急速に縮小化していて、ユーザーにとって嬉しいが、質のことを考えると喜んでばかりいられないのではないか。


パート2 情報提供と投資教育の課題を語る(受託者責任と忠実義務)
@投資教育

司会 第22条の投資教育における事業主の責務について、投資教育や情報提供ほかの必要な措置について、罰則がなく"努力義務規定"になっているのは――
山崎 "努力義務"というのは軽いニュアンスでなく、むしろ非常に大事であるという意味。しかし基準がなくペナルティーを課すというような形にするのは無理なので、基本精神として"努力義務"とした。アメリカのエリサ法を参考にしている。エリサ法は民事面を全面に出して損害賠償が中心になっている。日本の場合は民事プラス行政。個々の条文に行為準則を付けており、厳しいものになっているはず。
司会 投資教育は運営管理機関(以下運管)に委託することができるが、運管に丸投げした後、事業主には義務はなくなるのか――
山崎 委託とはあくまで事務の委託であって責任まで委託するわけではない。どの委託先を選んだかという責任は当然でてくる。
司会 サンデンでは運管にはいっさい委託せずに、自社でやられているが――
 サンデンでは、社員に対してベストの商品・サービスを提供するためには1つの金融機関に任せられないという考え方がベースにある。最近の企業では、何が何でも401kに移行しなければならないが人事としては制度変更で手一杯であとは金融機関に丸投げするというケースが多い。サンデンの場合は、法律の成立が送れたことで、制度変更と投資教育までにタイムラグがありゆっくりと準備ができた。企業によっては時間がないのだろうが、制度変更と401k業務が分業になって当たり前になるのは問題ではないか。
司会 投資教育を運管に任せた場合、法律にある「選任・監督義務」の責務を果たすには何をどうチェックすればいいのか――
山崎 加入者自身の声を聞くことが基本。加入者の不満や運用の状況を、何らかの方法で汲み取っていくべき。そのうえで問題があれば改善する。従業員に不都合が生じるのは会社にとっても不利益なことだから。
・アメリカで投資教育の最大の課題は継続教育。時間が経つと個人個人で差が出てくる。その部分のフォローにこそ事業主の責務があるのではないか。
司会 大切な退職金の行方を思うと事業主にはそれなりの責任があるのでは――
 退職金のうちどのくらいを401kに移行したかがポイント。その程度によって投資教育への力の入れ方も違ってくるのではないか。
・ 投資教育における最低限のガイドラインが必要なのではないか。
司会 サンデンでは投資教育にともなって何か変化があったか――
 これまでは人事というのは従業員にとって行きづらいところだったが、401kを契機に気軽に人事の門を叩くようになった。これは期待していなかった嬉しい変化。
・ 労働組合が前向きに取り組み、人事でなくても従業員の質問に答えられるようなシステムが確立した。
司会 運用プラン・モデルを提示する場合は、元本確保プランのみで行った場合を必ず示せとあるが、どういう意図か――
山崎 投資教育は制度の肝なのでかなりの量をさいて詳しく書いている。情報提供の際にはできるだけいろいろな情報をバランス良く提供することが基本。運用モデルにしてもいろいろなパターンを示すのが望ましいが、少なくとも元本確保の場合どうなるかということだけは加入者に認識しておいてもらいたいということで入れられている。

A 忠実義務について

司会 43条に事業主の加入者に対する忠実義務という項目がある。例えば運管を選択する場合、企業安泰のためにも取引のあるA社を選ぶべきか、手数料が安いB社を選ぶべきか。企業のためはイコール従業員のためなのか――
山崎 "忠実義務"というのは、とにかく加入者のことを第一に考えてくださいということ。「企業のためが加入者のため」と言った次点で加入者のためにならないのではないか。加入者は企業の従業員である前に年金制度の中の主体であるから。
・運管は手数料が安いからいいというものでもない。能力とか情報提供とかを重分吟味し、適正な評価を行った上で加入者にとって一番良いものを選任することが基本。
 サンデンでは取引のない金融機関の商品を2社加えた。
・ 現在、販売手数料が非常に頭が痛い問題。マーケットが崩れて、各社の手数料にかなり開きが出ている。当然シフトが起こるが、取引先でないところに残高が片寄った場合はやはり困る。
・ 取引先からの運管委託の依頼を断るのは人事の人間にとっては難しいので、財務の人間に窓口になってもらった方がよい。
・ 実際にスタートしてから3、4ヵ月だが、その間にもかなりのスピードで市場が様変わりしている。
司会 サンデンのように事業主が自ら運管を行うことの問題は? チェックもなく、事業主と運管の2面性を維持していかなければならない難しさがあるのではないか――
 いくつか客観的にチェックできるしくみを入れておいた。
・ 商品ラインアップを専門家に見てもらう。全商品の定性評価を必ず行う。
・ 社内に退職金委員会(会社側の責任者が6人と組合の委員長以下6人)を作り、商品の追加などの場合は必ず承認を得るようにした。
山崎 企業として運管としての責任も負うというのは本来の姿であり、制度の動きも一番わかりやすいだろう。ただ、個人情報の扱いに気をつけなければならない。
 個人情報の扱いについてはいくつか提起すべき問題が出ている。レコードキーピング会社はいま2つあるが、この2つのしくみがまるで違う。個人情報を一切出さないところと、承諾書を取れば情報は流すところ。どちらにしても問題がある。承諾書があれば何をやってもいいというのは危険だし、かと言っていざという時に個人情報が開示されないことで従業員に不利益を与えることもある。
山崎 個人情報を全く出してはいけないとは言わないが、個人の大切な財産だから、スタート時は基本的に厳しめにするべき。今は不自由なところがあっても、最終的には加入者にとって一番良い形になるだろう。
司会 いざという時は、包括的に同意を取って情報を開示する可能性があるか――。
山崎 "いざという事態"がいつなのかをだれが判断するかということが問題。
 承諾書をもらうこと自体がナンセンスでは? こういう場合というよりは、勤務企業だけは出せるのように開示するところを限定しておけばいいのではないか。

B 自社株について

司会 401kでは運用商品として自社株が認められているが、そのリスクを充分説明しておくべきとあるが――。
山崎 自社株の客観的なデータを知らせるだけで、勧めたり、強要したりしてはいけないということ。
・ 倒産したときの二重リスクについては説明しておく。
・ 実際に121社のうち自社株を入れているのは2社。
 サンデンの退職金スキームの基本は、会社のリスクから100%切り離すことだから自社株は入れていない。一般的には社員のインセンティブとして取り入れるところもある。株を買うときに社員が一番よくわかるのが自社株だからメニューとしてあって当然。アメリカのように自社株によって億万長者になる人がいてよいのだから青天井で良い。しかしエンロンのようなことを考えると、上限を作った方がいいのかもしれない。
山崎 この制度の基本は加入者が自己責任を負うことなので、選択権だけは保障したい。なまじ制限を加えると自己責任が問えなくなるということで、自社株を入れた。

C運営管理機関について

司会 金融機関が運管になる場合、純粋に加入者のことを考えるならば営業部隊と運営管理業務部隊を分けるべき。しかしそれで金融機関にうまみはあるのか――
 マーケットが崩れた現在の状況を見る限り運管は儲からないのではないか。運管を自社でやるところや、運管を金融機関に任せても商品選定や投資教育は自社でやるようなケースが増えている。運管の旨みが急速になくなっているのが現状。加入者思いのマーケットに進んでいる。金融機関にはちょっと厳しすぎるのかもしれない。

D 401kの今後

司会 スタートして1年たったが、今後の制度見直しの予定はあるのか――
山崎 いろいろな面での動きの中でここがおかしいという議論があれば検討は当然する。スタートしたばかりなので、まだ制度論としては議論できない。あえて改善点を挙げるとすれば、税制の問題は別にすれば制度より実務面か。当面は大きな改善よりはこまごました実務面の小さなことに一つずつ地道に対処していくことになるだろう。
司会 中小企業の導入が順調ということであったが、今後、さらに優遇策なり加入促進策などが打ち出されることは――
山崎 中小企業の場合、相対的にどうしてもコストが高くなってしまうので、これを効率化していく方法を研究していかなければならない。
 中小企業にとっては総合型などのシンプルなものが良いとは思うが、投資の勉強を始めた加入者にとっては商品やサービスにおいて物足らなくなるのではないか。なので、仕組み全体のフィーを下げることが先決ではないか。
・何らかの追加的な過去分を放り込む仕組みを考える。ある程度のまとまった金額になる目処が立たないと加入者も真剣になれない。



パート3 確定拠出年金の未来
山崎 新しい制度は最初はかなり慎重な形になるもので、使いづらい面があるのもやむを得ないだろう。しかし永遠に使いづらいわけではない。まさにこの制度は歩きながら考えていく制度。そのため、現場の実態をいかに正確に知るかが重要。
・ 金融機関の問題が多くなるだろうが、それらを解決していくなかで本当の意味での個人投資家による金融市場になって欲しい。
 401kは日本国民にとって大事な制度だから、金融機関は制度全体をじっくり見据えて最終ユーザーに本当に必要な問題を最優先に解決していって欲しい。。401kの仕組みの中で必要なファンクションはどれで、それに価するフィーが適正かどうかをとらえ直してもらいたい。
司会 401kという年金の一つの話が、日本のあり方、経営のあり方という話につながっていく。401kは非常に意味のある制度であるということを実感した。



-特定非営利活動法人 確定拠出年金教育協会 事務局-
-お問い合わせ:info@npo401k.org-